サボテン

2020年07月02日

【エッセイ】サボテンが、花をつけている

 「サボテンが、花をつけている…」
 Zガンダムにて主人公カミーユ・ビダンに殴られた後にクワトロ・バジーナ大尉が発した知る人ぞ知る名言(迷言?)である。ガンダムについて語ると長くなるし、この記事の趣旨ではないため詳細は省くが、名言・迷言の多いZガンダムにおいても屈指の難解なセリフである。この言葉を発するに至る経緯はそれなりに複雑なもので、この言葉を発した際のクワトロ・バジーナ大尉の心境たるに、花をつけたサボテンを何かに見立て、カミーユ・ビダンにつぶやいたのだろうか、何にしてもガンダムシリーズに特有の複雑な人間関係を示すような、詩的なセリフであると思われる。
 そんなこの名言を踏まえ、つい先日ベランダに置いてあったサボテンから赤い美しい花が二つ咲きかけているのを見た筆者もまたつぶやいてしまった。
 「サボテンが、花をつけている…」
 筆者は昨今のコロナウイルスの影響で、長い帰省をしていて、何ヶ月も家を開けたままだったのだが、帰ったところに丁度花を咲かせたのだった。家族に話したところ、「それはきっと、(筆者に)花を見られたかったのよ」との答えだった。
 サボテンというのは不思議な魅力をもつ植物である。遠い異国の砂漠にて生を受け、その過酷な環境に適応し、昼の荒涼とした砂漠の灼熱の日差しを受け、凍えるような夜に耐え、わずかな水分や養分を蓄えながら花をつけるのである。芽を伸ばし、花をつけるという行為は、植物にとっては貴重なエネルギーを消費するし、過酷な環境に育つように適応したサボテンにとってはなおさら、まさに一世一代を賭けた行為だろう。誰もいない砂漠のどこかでも、季節が来れば、サボテンは花をつけるのである。誰に見られるわけでもないのに、それは美しい花をつけるのである。
 筆者のアパートのベランダのサボテンも、もちろん筆者に見せるために花を付けたわけではないだろう。けれども、サボテンという植物の生まれながらの使命のもとに、頑張って花を付けたところに、たまたま立ち会えたというのは何か運命的な、嬉しいものを感じるところである。
 サボテンは語らない。ただその物言わぬ佇まいからは、なにかこう、人間の心の波長に共鳴するような、そんな何かを感じさせるのである。
 締めくくりに、漫画『孤独のグルメ』にて主人公井之頭五郎がサボテンを購入するきっかけとなったとある作家の言葉を引用したいと思う。

  『シャボテンというのはね、人の来ないそれは淋しい砂漠に生えとるんです』
  『だから夜中にね 一人月の光の下でこいつを眺めとると そういう砂漠の淋しさがこぉー伝わってくるんですよ シャボテンからね・・・』
  『そうすると日中の目の回るような忙しさもなんもかも忘れられるんです』

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