【社会論エッセイ】人畜無害な社会不適合者論 ~社会に迷惑をかけないとはどういう事?~【エッセイ】2020年喫煙者の心得

2020年07月02日

【書評】『歴史のなかの人びと』彩流社 ~歴史の中の個人とマスターナラティブ~


樋口映美編『歴史のなかの人びと』彩流社 書評 

 今回紹介するのは彩流社から出版されている『歴史のなかの人びと』。
 歴史に名を残したような有名人ではないものの、歴史の中に確かに生きていた人びとに焦点を当てた一冊。歴史マニアの端くれである筆者個人の考えとしては、歴史の中で有名人が主導した政治史とか、英雄たちの歴史とかに興味がないわけではないものの、より焦点を当てて考えてみたいと思っているのは、本書に書かれているような、歴史に名を残さなかった個人が、その当時の社会の中でどのように生きていたのかという生活模様であったから、本書を立ち読みして、特に第三部の「事件・出来事に見える社会」という節に興味を持って本書を購入した。ネタバレ?になるため詳細は省くが、南北戦争の動乱の時代に巻き込まれた奴隷所有主の白人一家の混乱を日記から垣間見る節では、筆者は決して奴隷制を肯定するわけではないが、奴隷制に置いて善と悪というように区分された時に悪の側となってしまう白人もまた、生まれた時代に翻弄された一人の人間に過ぎなかったのではないかという感情を抱いた。ともあれ、その人物が白人であるとか黒人であるとか、そういった色眼鏡を外して個人を見ることが、昨今アメリカで行われているBLM運動においても真に求められるべき理念なのだろうかと、個人的に思った次第である。
 また「マスターナラティブ」というキーワードが本書では重要となっている。「マスターナラティブ」とは、一般に教科書に書かれているような通説の歴史であるが、当然のことながら実際の歴史には教科書に乗らなかったものの歴史の中で活動を行った人びとが大勢いるわけである。そういった人々の視点から見ると、歴史用語としてサラっと学ぶような出来事も、全く違った見方が出来るということである。
 全体として本書は、歴史の専門書でありながら文章が比較的平易で読みやすかった。全体的にアメリカの歴史に偏っているが、どこの国の歴史の話というのもそれほど気にならない個人の話を扱っているので、歴史好きの方で、歴史の中の個人とか、その時代の生活模様とか社会史的なことに興味がある方は手にとってみるといいだろう。



このエントリーをはてなブックマークに追加
voiceofdrone at 07:06│Comments(0)書評 

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
【社会論エッセイ】人畜無害な社会不適合者論 ~社会に迷惑をかけないとはどういう事?~【エッセイ】2020年喫煙者の心得